「好き」のハードルを下げる
かつて、自分のことを無趣味でつまらない人間だと思っていた。
誰かを熱狂的に好きになったり、何かに夢中になってのめり込んだりすることがあまりない。
ファンとかオタクを自称できるものがある人たちが羨ましかった。
でもそれは、「好きなことなら苦労もいとわずに取り組めるはず」というのを、「ちょっとでも面倒だとかしんどいと感じたら、きっとそれは本当に好きじゃないんだ」と思い込んでいたからだと気付いた。
例えば文章を書くこと。
「自分の文章が世に出回る」というのが、中学生の頃からの密かな野望だった。
でもそれを叶えるためには、出版社や新聞社で働くか、出版のオファーが来るくらい有名になるか、自費でどこかに持ち込むしかないと思っていた。
野生動物救護に関わること。
就職先も狭き門。条件だってとても厳しい。
救護対象も厳格な制限があって、目の前の命を何でも治療していいわけではない。
保護猫活動。
ボランティアとして続けるためには、時間もお金も捧げる覚悟がいる。そしていくら頑張っても終わりが見えない。
どれもこれも大変な部分を見つけては、「私には無理だ」と諦めていた。
でも、好きなことに関わる方法は1つだけではない。
出版業に携わらなくても、スマホ1つで簡単に開設できるブログを始めてみたら、私の書いた文章を通じて、たくさんの人と知り合いになったり、色々な土地へ行ってみたりすることができた。
野生動物医学分野で活躍することができなくても、猛禽類医学研究所のグッズを購入することで活動を支援したり、会話のきっかけとして野生動物救護について知ってもらう機会を増やすことができた。
奉仕活動に参加することができなくても、保護猫カフェやゲストハウスをクラウドファンディングで支援したり、そこでお茶したり宿泊したり、体験レポを書くことで興味を持ってくれる人が出てきた。
そんなことを繰り返すうちに、無趣味でつまらなかったはずの私は、いつの間にか時間がいくらあっても足りないほど、やりたいことで溢れ返るようになった。
「好きなものが見つからない」というときは、もしかしたら「好き」というものに対してハードルを上げすぎてしまっているのかもしれない。
まずは自分が飛べそうな「好き」の高さを探してみる。
そして実際に飛んでみると、思いがけない世界が広がっていたりする。