仕事は踊りながらやるくらいでちょうどいい
「先生、うちの新人が仕事中に踊っているんですけど、どうしたら良いでしょうか?」
ある日、こんな相談を受けた。
4月から新しく採用した社員が、職場内に流れるBGMに合わせて踊っているのだが、今までそんな新人を扱ったことがないので、どう接したら分からない、というものだった。
その話を聞いたとき、正直、その新人さんが羨ましいと思った。
私が新人の頃は、いかに他の人の邪魔をしないか、怒られないようにするかで一杯一杯で、そんな余裕はなかった。
職場内を繰り返し流れる放送に、気が狂いそうになっていた。
それを思うと、鼻歌まじりで踊れるくらいの度量がある新人さんには、めちゃくちゃ高評価をつけたいくらいだ。
だから、冒頭の相談には
「楽しそうなら良いんじゃないですか?」
と返事をした。
すると、そばにいた他のスタッフが
「いやいや、人前に出る仕事なんだから自覚を持て、って注意すべきでしょう。」
と応えた。
そっか、それが一般的な反応なのか。
勤務中は仕事の質に関わらず、常に「真面目」でなければならない。
そりゃあ私だって、仕事中におしゃべりに夢中で顧客への対応が遅れたり、動線を塞がれたりすると怒ったりする。
手術中にあまりにも真剣味が足りないスタッフに対して、「手術室から出ていけ」「視界に入らないでくれますか?」くらいは言ったことがある。
しかし、これは明らかに仕事のパフォーマンスが低下していたからだ。
誰の邪魔にもならないところで、ちょっとご機嫌に体を揺らすくらい、別に大した問題でもないような気がするんだが、それはダメなのだろうか。
アニメのサントラを流しつつ、リズムを取ったり歌ったりながら車出勤をしている私にとって、勤務中の「真面目な態度」とは、一体どの程度の範囲を示すのだろうかと、考えさせられた出来事だった。