夢と仕事と生きる力
今まで二度ほど、本気で人生を断捨離したくなったときがある。
一度目は、10代の学生の頃。
そういうマニュアル本を机の引き出しの奥底にしまい込んで、具体的な日時や方法まで考えていた。
今振り返ると、笑ったり責めたくなるようなことだけど、当時の自分に取っては、それが唯一の救いのような気がしていた。
そして決行日。
ぼんやりとした頭にある考えがふと浮かんできた。
「今の状況も辛いけど、このまま獣医になることにも挑戦せずに終わるのもつまんないなぁ。」
その日は一人で勉強したり全力で歌ったり踊ったりして過ごした。
気がつけば色々なことがどうでも良くなっていた。
当時の「獣医になりたい」という夢のおかげで、何とか思い留まることができた。
二度目は社会人になってから。
夢はもはや日常の仕事となり、色々と厳しい現実も知った頃である。
専門知識を悪いほうに利用して、あれとこれとそれを使えば確実に楽になれるなぁなんて考えていた。
あとは持ち出すタイミングだけ。
でも、そのときもふとした考えが頭をよぎった。
「私が突然いなくなったら、今診ている子たちはどうなっちゃうんだろう。」
単純に仕事の引き継ぎや責任感の話ではない。
いくら他人のペットと言えども、私にとっても大事な存在であることに変わりはないのだ。
その負のエネルギーは、仕事や他の気になることに全て費やすことにした。
二度目の危機は、仕事へのプライドや情熱のおかげで脱したのである。
夢を追ったり、好きなことを仕事にしたりするのは簡単なことではない。
周りが思うほど、いつも前向きでキラキラしてもいられない。
「あなたにとって、仕事とはなんですか?」
ただ、私にとっての夢や仕事は、生きる力そのものなのである。